2020年暮れ頃から父の認知症疑惑が発覚しました。
現在、父は老人介護保険施設に入所しています。通称老健ですね。
ここに至るまで色々なことがありました。
こうやって文字に起こすとほんの数行で事足りてしまうのですが…本当に様々なことがありました。
初めてのことだらけで何をするにもわからず、たくさんの経験値を積みました。
それまで介護とは無縁の生活だったのが突然介護せざるを得なくなる、
他人事だと思っていましたが当事者になってみて初めてわかる介護の大変さ、
この経験を誰か他の人に伝えたい、という想いから記事に起こすことにしました。
役に立つかはわかりませんが、こんなこともあるんだ。という程度でも構いません。
介護に無縁の人にこそ目を通していただけたらと思います。
父は糖尿病持ちでした
余談ですが父は2021年で69歳になります。
もう20年も前に糖尿病を発症し、インスリン投与が欠かせない体となっています。
発症当初、それまでは筋骨隆々の体つきでしたが血糖値を下げるために緊急入院し、2週間程10kg以上痩せてあっという間にやせ細って帰ってきたのを覚えています。
入院当初、血糖値は確か500を超えたとかで病院の先生にこのままだと命に関わると宣告され、年末の忙しい時期に入院を余儀なくされました。
何故糖尿病になってしまったのかはわからないのですが、今思えば食生活だったのでしょうか。
当時は離婚して間もない頃で私達息子を育てるのにかなりの心労をかけていたと思います。
そういったストレスもあったのかなと。
糖尿の家系でもなかったし、肥満体系でもなくむしろがっしりとした、若いころ空手をやっていたということもあって普通の人よりも筋肉量もあって糖尿病とは縁遠い体系であったと思います。
そんな父がどうして…当時は疑問に思うと同時に心配でもありました。
それから3食の食事ごとにインスリン注射が欠かせない体となりました。
当時の父の糖尿の情報といえばこんなこと位しかわからず、当然ですが糖尿の管理は父本人に任せており、
私達が介入するという考えもありませんでしたので、父が糖尿病になってしまった、1日3回の注射は大変だなあ程度の認識しか持ち合わせていませんでした。
最近知ったのですが、糖尿病患者は認知症になる確率が健常者と比べて2倍になる、というデータがあるそうです。
色々な人から話を伺いましたが糖尿病は認知症発症のリスクが高まる、と話されていた方が実際にいらっしゃいました。
糖尿病=認知症と、結びついているイメージを持っている方が複数いらっしゃったのが意外でした。
私が無知なだけなのかもしれません。
現在の糖尿病の状態
今年に入ってから父の糖尿病の管理は私が行ってきました。
仕事を辞めて年金で生活するようになり、職場近くの内科に通院していたようですが自宅最寄駅の糖尿専門内科に切り替え、そちらで毎月お世話になってきました。
今年2月頃に初めて受診をし、そこで発覚したのが糖尿病1型という事実。
検査をしたところ、どうも1型の可能性が高いとのこと。
糖尿発症当初は1型ではなかったかもしれない、どういう経緯かは不明だが1型に変化した可能性が大きいと。
1型2型とあるのは知っていましたが1型2型の違いについてはわからなかったので、先生から簡単に説明を受けました。
世の中のほとんどの人は2型糖尿みたいなのですが、1型糖尿の人は先天性の病気で生まれながらにしてインスリンが体内に分泌されず、子供の頃からインスリン注射をしているような患者さんの方が多いとのお話。
稀に父のように後天的に発症する方もいるそうで、どちらかというと珍しいタイプの発症だそうです。
厄介なのが1型糖尿病はインスリンのコントロールが難しく、ちょっとのことで体内の血糖値が激しく増減してしまうということ。
そのために血糖値を正常な状態で保ち続けるには厳密な投薬コントロールが必要で、それは若い方でも容易ではないみたいです。
父のように認知症を患って1型糖尿病をコントロールするとなると、ハッキリ言って難しい。
インスリンのコントロールは必須条件でそれは独居のままだと無理です。とキッパリ言われました。
糖尿病は高血糖状態になるよりも低血糖になることの方が怖い病気で、低血糖になってしまうと意識を失って最悪そのまま心筋梗塞を併発してしまい、帰らぬ人となってしまうことも…。
認知症を疑ったらまずは病院へ
認知症と言っても色々な病態があります。
アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、などがあります。
父の認知症はアルツハイマー型認知症と診断されています。
これまでもアレ?と思ったことは何度もあります。
- 同じ内容の会話を繰り返す
- さっき話したことの内容を覚えていない
- お昼ご飯を食べたのに食べてないと言い張る
近ごろはこういった症状が散見され、歳のせいなのかなんなのかわからないけど物忘れが増えてきたなあ、とは思っていましたが…。
まずみなさんにお伝えしたいのが、少しでも認知症の疑いがあったら専門の病院を受診されることを強く勧めます。
上記のような症状が見られたら1度診てもらってください。
それは何故か?
受診して認知症と診断されてもされなくても、その後の展開が変わってくるからです。
認知症と診断されれば投薬治療しようとか、介護サービスを受けようとか、認知をこれ以上進行させないように行動することができます。
認知症と診断されなかったとき、ただの物忘れで良かったねと安堵することができ、家族の気がぐっと楽になります。
ただ、最初は病院に行くのは気が重いかもしれません。
私はそうでした。
もし、認知症と診断されたらどうしよう?と。
ついに介護生活が始まるのかな。とか、色々な考えが浮かびました。
結果的に認知症と診断され紆余曲折を経て老人介護保険施設へと入所することになるのですが、そこまでの道のりは険しいものでした。
まずは病院で診察を受ける
なんだかおかしいな…
繰り返しになりますが、そう思ったらまずは認知症専門の病院にかかることを勧めます。
明らかに以前よりも物忘れが多くなった、
約束を忘れるようになった、
それらの症状はただの物忘れではないかもしれません。
認知症は症状の改善は難しいのですが、遅らせることはできるとされています。
早めに気づき、早期にケアをすることが大切です。
私の父が病院で診察を受けるとき付き添いで私も同行しましたが、結果が知りたいような知りたくないような、複雑な心境でした。
MRI検査を受け、先生の判断は「アルツハイマーとはいかないけれど、脳の形が酷似している」
「年齢からすると脳の萎縮が進んでいる」
「日常生活に支障をきたし始めているので、認知症と言えば認知症でしょう」
このように言われました。
先生の話しぶりから認知症の症状としては軽いものだと察しました。
MRI検査とは別に先生の問いかけに応えていく認知症テスト、のようなことも行いました。
その中で特に印象的だったのが「野菜の種類を答えて下さい」というものでした。
その場で思いついた野菜の種類を答えていくのですが、父は野菜の種類が4種類しか出てきませんでした。
まだいっぱいあるのに…
すぐ横でそのテストを聞いていたので、これが認知機能に障害をきたしているという状態なのか。と。思い知りました。
先生は「認知機能の低下としてはまだ軽度なものの、多角的な、色々な角度から物事を考えることが難しくなってきています」
「アルツハイマー型認知症の初期症状の患者さんに多く見られる症状です」
こうおっしゃっていました。
診察を終え、認知症の症状の進行を遅らせる薬をもらいます。
この投薬での治療ですがそこの先生曰く「気休め程度にしかならない」そうです。
投薬で治ったら世界の人は大喜びだよ。と。
ではどうすればいいのか?
認知症の進行を遅らせるには頭を使うことが大事。
1番いいのは人と話すこと。それも身内ではなく他人。
他人と話すときは相手の表情を読み取って、次に何を話せばいいか、どんな言葉遣いをすればいいか、自然と頭を使うから。
とにかく頭を使って他者とコミュニケーションを。
こういったアドバイスをいただけました。
とはいうものの、このコロナ禍ではそういったコミュニケーションを取るのも一苦労なのですが…。
通院してわかったことは現在、認知症は根本的に治す方法は存在していない。
ただ進行を遅らせることしかできない。
ということです。厳しい現実を突きつけられました。
先生は
「症状が一気に進むことはない。何年もかけてゆっくり進行します。」
なので父の認知症の症状も最近発症したわけではなく、何年も前から症状は出ていてそれが私達家族の目にたまたま触れることになった、ということのようです。
もしも認知症に気づけていなかったら…
もしあのとき認知症に気づかずにいたら今でも普段と同じ生活をしていたのだろうか?
父の介護もすることなく、私達家族もそれほど父に干渉することもなく生活していたのかあと。
もし気づかなくても、おそらくこれまでと同じような生活水準は保てたと思いますが、糖尿病を患っている父は常に命の危険を感じながら生活することになっていたと思います。
認知症によるインスリンの打ち忘れ、インスリンの過剰摂取のリスクは避けられません。
実際、数か月前に低血糖で倒れて最寄りの大きな病院へ救急搬送されました。
お巡りさんと病院の救急隊員から、いきなり電話がかかってきたときはさすがに驚きました。
「〇〇病院の救急センターの者ですが、お父さんが倒れたから急いで来てください」
何事かと思いました。
インスリンを打ったか打ってないか、記憶が曖昧なことが多くなってきていた為、インスリンを多く打ってしまったのかなとは予想していましたが…
予想は的中、私が実家に着いた頃に意識のない父を救急車に乗せて病院へ搬送するところでした。
どうやら介護のヘルパーさんの方が様子がおかしいということで、救急車を呼んでくださったようです。
このときは病院へ搬送されて血糖値を上げてもらい、なんとか事なきを得ましたが、誰も気づかないでいたらどうなっていたのか?
考えるだけで恐ろしいです。
認知症は少しづつ進行するそうですから気づかずにいたらその分進行は早まって、今よりももっと状態は悪くなっていたかもしれません。
恐れず1歩踏み出してほしい
もしかしたら親は認知症かもしれない…
そう思うのであればまずは病院に行くべきです。
気を付けてほしいのは物忘れと認知症は違う、ということです。
歳をとれば誰だって物忘れは多くなっていきます。
それは人間の能力の衰えからくるもので自然なことです。
対して、認知症は病気です。
病気であればお医者さんに診てもらうのは、これもまた自然なことです。
では物忘れと認知症はどう違うのか?
見分け方について簡単に説明すると、認知症患者は体験そのものを忘れてしまいます。
上記で父の例を挙げたように、お昼はもうご飯食べたのに食べていないと認識している。
お昼ご飯は何を食べたっけ?
ではなく、
(お昼ご飯はもう食べたのに)お昼ご飯はまだ食べていない。
これが認知症の症状です。
あなたの気になるご家族はこういったことありませんか?
くどいようですが、もし心当たりがあれば早めの受診をするべきです。
どんな診断が下されるか、怖いかもしれません。
もしかしたら要介護の生活になるかもしれません。
ですが、あなたの大切な家族はたった1人しかいません。
今気づけたことを幸運と思ってください。認知症と気づけるのは家族だけです。
もうちょっと様子を見てから…では手遅れになってしまう可能性があります。
病気はなんでもそうですが早期発見が大事です。
仮に認知症だったとしても、適切なケアで症状が軽ければ認知力を維持する、もしくは遅らせることが可能と言われています。
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