今までずっと気になっていたロードノイズの低減・遮音を実施しました。
施行場所はタイヤハウスでこれまでタイヤハウスのデッドニングは経験がありません。
ロードノイズの低減に最も効果のある場所は音の発生源であるタイヤハウスと言われています。
うまくいくかどうかは未知数でしたけど、そこそこ効果があったのでここに記載します。
タイヤハウスの制振・遮音方法
概要
タイヤハウスの制振・遮音を行うにあたって使用する材料を選定します。
今回の目的は低音ロードノイズの低減です。
ゴーとかガーとか、荒れた路面を走っているときに最もうるさくなるアレです。
ところで車に静音化を求めること、その理由はなんでしょうか?
「車内を静かにして快適性を向上させたい。」
「オーディオをより良い音で聴きたい。」
「同乗者に気持ちよく車に乗ってもらってドライブしたい。」
理由は様々でしょうけどその想いの根本には
車内を静かにすることで気持ちよく車に乗りたい。
そう思っているはずです。
初代セルシオの静粛性が世界に衝撃を与えた80年代後半、日本のお家芸である車のおもてなしが世界に認められ、
高級車=静か
この図式を不動のものにしました。
日本人は車に静粛性を求めるのです。
日本専用の高級車(基本的には)であるクラウンは古くから静粛性に力を入れてきました。
現在ではコンパクトカークラスの車ですら、かなりの静粛性を持ち合わせています。
静粛性のレベルが車の進化と共に向上してきているのは明らかです。
こうした背景もあってか、車の静音化を求めるDIY作業を行う方もかなり増えてきた印象です。一昔前まではわりとニッチなカスタム手法だったのですが。
しかし静粛性を追い求める風潮があるのは国産車であり、輸入車はそれほど力を入れている分野ではありません。
そのため、ある程度高い車格の車でも静粛性は日本のコンパクトカークラス、といった逆転現象もたまに見られます。
BMW、アウディなんかは運転中の車の挙動をドライバーが把握しやすくするために、あえてロードノイズ等の雑音を残す車作りをしているそうです。
それは筆者の乗るアメ車でも雑音を残す車作り、という点では例外ではありません。
筆者の現在の愛車はキャデラックXTSです。
日本ではかなりレアな車なので走っている姿などまず見かけることはなく、その存在すら知らない人も多数です。
少し前まではキャデラックブランドのフラッグシップを名乗っていたFF駆動の車です。DTSとSTSを統合してリリースされた車ですが日本では正規輸入されたことはなく、ヤナセで約2年間取り扱いがあったのみ。ヤナセとはいえ並行輸入扱いです。
イイ車なのは間違いないのですが、あまり売れなかったのか早々にヤナセも輸入を取りやめてしまいました。
現在は本国アメリカでも生産完了となり、新たなフラッグシップであるキャデラックCT6へとバトンタッチしています。
XTSはそんなキャラクターの車なので快適性は概ね良好。遮音性能もバッチリですが唯一ロードノイズだけが耳障りでした。
純正で20インチを履いていることもあってまあまあの騒音です。タイヤはファルケンFK510。
静音にふったタイヤでもないので余計にそう感じるのかもしれません。
タイヤハウスの制振・遮音を行うとどう変化するのか?実験的な意味合いも兼ねて作業に取り組みました。
制振・遮音に使った材料
レアルシルト
制振材として定番のレアルシルトは外すことができません。
オーディオのデッドニング材として昔から広く使われてるウレタン系の制振材です。
今日までアマチュア~プロの方に至るまで、長く使用されているということは信頼性の証でもあります。
性能は折り紙つきですが、部材としては少々硬めなので凹凸が入り組んだ複雑な形状への施行は難しく、その点については注意する必要があります。
ノイサス高比重制振シート
今回初めて使用した制振・遮音材です。
ロードノイズの主要成分は低音です。
その低音をいかに遮音できるかがポイントとなりますが、低音を遮音・防音することはとても難しく、完全に防ぐことは困難だと考えます。特に素人のDIY施行では尚更です。
その為、少しでも効果の高い部材を選定したかったのと、予算との兼ね合いからこのノイサス高比重制振シートを選びました。
ロードノイズの低音を効果的に遮音するには質量の重い部材が効果的とされています。
このノイサス高比重制振シートですが3枚1パックで販売、それを2パック購入しましたが2パック一緒に持ち上げるとかなりズシっとくる重さで、女性の方ではちょっと重いかな?と感じる程の重さでいかにも効きそうです。
そして鉛にとても近い性質を性質を有しているということで遮音・防音効果が更に期待できます。
鉛は音を通さない性質を持っています。加えて高比重でそこまで高くない、ということで選びました。
貼り付け面はブチルとなっていて素材自体がよく伸び、かなり柔軟性があります。キツイ曲面等にも追従して貼り付けが可能です。
ですが接着能力はあまり高くなく、立壁面や天井面に貼る場合は別途接着剤などで補強が推奨されています。おそらく自重に耐えられなく、落下してしまう可能性があるからでしょう。ずぼらな私はそのまま貼ってしまいましたが….。
アクワイエ高比重制振材
作業途中で部材が足りなくなってしまったので、急遽オートバックスで調達してきた制振・遮音材です。
オーディオのデッドニング材としての使用はよく見かけますが、タイヤハウスへの施行例はあまり見ないので実力は未知数です。
ショップでの取り扱いも多く、信頼性は問題ないでしょう。
ホントはレアルシルトが欲しかったのですが、レアルシルトは店舗での取り扱いが中々ないのでなるべくレアルシルトに性質が近そうなモノを物色してコレにした、という経緯があります。レアルシルトに比べると1.5倍位高かったです。
ブチル材質もよく考えられていてハサミで切るときにベタベタしないようになっています。接着力も問題なさそうです。
その価格に見合うだけの働きをしてくれれば文句はないのですが。
シンサレート
今や純正で採用されているのが当たり前の吸音材です。
一昔前は限られた高級車等に使われているような素材だったのですが、最近ではコンパクトカーでもお目にかかるように。時代は変わりましたね。
とても軽いので重量増の心配が皆無なのがメリットです。
主に中・高音の吸音に使用されています。シンサレートに限らず、質量の軽い部材は低音の遮音・防音には効果があまりありません。
入手性がよく、DIYで使用されることも多々あり、どのような場所にも使用できるので万能性のある吸音材です。
その一方、肝心の吸音性能はダンボール並みかそれ以下、などと揶揄されていることも。
制振・遮音材を貼り付ける<フロント編>
まずはジャッキアップしてホイールを外さなければ作業ができません。
キャデラックXTSのフェンダーライナーは最近流行りの不織布を固めた素材でできていて、水ハネなどの音を軽減してくれるようになっています。
ここで1つ誤算がありました。
当初の目的は車体側にレアルシルト、ライナーにノイサスを貼り付ける予定でしたがこの不織布素材のおかげでノイサスが接着できません。
清掃、脱脂してどうにかなる雰囲気ではなく、諦めるしかなさそうでしたので予定を変更してレアルシルト・ノイサスの2重貼りにすることにしました。
この不織布素材のライナーは先にノックスドールやエーモン・静音計画スプレーでベタベタにして下地を作っておかないと、どんな制振・遮音材も接着することができない。
と、プロショップのブログ記事に記載があったのは知っていたのですが、本当にそのようです。
あとから考えればこの2重貼りでも十分効果が見込めそうなので、別にライナーにこだわることもなかったのかなと。
このライナーはフロントバンパー付近にまで伸びていて完全に脱着するのは面倒だったので、途中まで外してあとは強引に折り曲げて作業をしました。
そして制振材であるレアルシルトを貼り付けていくわけですが、大事な作業のポイントがあります。
それはなんといっても脱脂と圧着です。
よく接着するように入念に脱脂し、しっかり制振効果が見込めるように圧着します。
圧着するには専用のローラーがかなり便利です。オートバックス等のデッドニングコーナーにおいてあります。プロはハンマーも使うとか。
制振材は圧着させることで車体の制振が抑えられ剛性感を出す仕組みになっているので、ここは手を抜かずにしっかり作業します。
ネットではコンコンと音が響くようなところに貼り付ける、と書いてあるのよくを見ます。
キャデラックXTSに限ってはそんなことはなく、どこを叩いても中身の詰まったような音しか出さないので貼り付けやすい部分を狙ってレアルシルトを貼っていきます。
DTSはわりとスカスカな感じでSRXクロスオーバーは同じように詰まった感じでした。設計の違い、車作りの進化を感じます。
レアルシルトを満足いくまで貼り付けたらその上にノイサスを被せるように貼り付けます。
ちなみに施行範囲ですが、フェンダー全体ではなくて室内側、バルクヘッド方向のみの施行に留めてあります。予算との都合でこうなりました。それに室内から遠い位置に施行してもあまり意味がないと思ったので。
フェンダーライナーにはシンサレートを貼り付けます。
以前のSRXクロスオーバーにはシンサレートが純正状態で貼り付けてありました。
おそらくこれだけではロードドノイズ低減にはあまり効果は見込めないと思われますが、純正設定されている車は結構あるのでマネをします。
貼り付けは手持ちの接着材で強引に貼り付けました。少し接着力に不安がありましたが、車体側と挟み込むような形になるので少し接着されていれば脱落の危険はないだろうと。
結構シンサレートが余ってしまいそうだったので、画像のフェンダー車体側の隙間に丸めて適量詰め込むことにしました。
効果があるかどうかはわかりませんが、音は空洞のある場所で響いたり増幅されてりするので、その軽減を図ります。
作業する際は施行する部位をしっかりと脱脂しよう。そうすることで制振材の性能を余すことなく発揮できます。
タイヤハウス制振・遮音の効果は?
40km程度までのロードノイズはかなり静かになりました。
静かな路面では更に静かに、荒れた路面でも明らかに静かになっています。
タイヤのパターンノイズも抑えられているし、少し突き上げも緩和されているような気がします。
交通量の多い街中や、片側1車線の道路であまりスピードを出せないときなど、とても快適になりました。
反面、60km~超えた位からのロードノイズはあまり変わらない、という結果に。
1番気になっていたのは高速域でのロードノイズだったので、ここにあまり効き目がなかったのは少々残念な結果となってしまいました。
近所の中速~位で走行できる道路を20分位走ってみましたけど、やっぱりうるさいところはうるさいままでした。
以前と比べて静かになっているのは間違いないのですが、体感度合いとしてみるとちょと物足りないかなあと。
ロードノイズを完全に消すのは不可能とはいえ、もうちょっと期待していたのですが….。低音の響くロードノイズの対策は最も困難と言われますが、その通りです。
ただ、履いているタイヤがファルケンFK510ということを踏まえれば、十分静かになったともとれます。
ノイサス制振シートが効いているのか?運転席に座った状態で自分の足元近辺、ノイサスを貼った付近からはタイヤの走行音はあまり聞こえず、逆に他の部分からの走行ノイズが増幅されたように感じ、より目立って気になるように。
この点は施行前とは確実に変化のあったポイントですね。音の出どころが変わりました。
タイヤを履き替えてコンフォートタイヤであるレグノやアドバンデシベルV552、最新のビューロVE304辺りに履き替えればもっと効果が望めそうなのは、後々のお楽しみということで。
思ったよりは効果が現れず残念。
制振・遮音材を貼り付ける<リア編>
フロントの作業を終えて、ノイサス制振シートが思いのほか余ってしまい、後日リア側も着手することにしました。
フロントと同じような雰囲気だろうと思っていたのですが、リアの方がフロントよりも貼れそうな場所が多く、レアルシルトの手持ちがなくなってしまって急遽代替え品としてアクワイエを購入して貼り付けました。
しかもリア側の車体を叩いてみると、コンコンとフロントよりもよく響く場所が結構多くて驚きました。エンジンという重量物がない分響きやすいんでしょうか?
思えばDTSもリア側はよく響きました。
パコンパコン鳴り響くのでリア側の剛性はあまり考えていないのかなとか、ショーファードリブンではなくドライバーズカーとして考えていたのか(あのデカさであり得ませんが)、それとも単なるコストカットなのか、などと色々と考えてしまいました。
これは貼りがいがあるぞ、と意気込んでいたのですが追加購入したアクワイエもまだまだ足りず….
ですがこれ以上は予算的にもなかなか厳しいものがあったので、今回はここまでとしてノイサスでフタをして作業終了としました。
アクワイエはここで初めて使いましたがなかなか使い勝手はよくて、個人的には好印象です。
レアルシルトよりも柔らかいので貼りやすいし、ウレタンではなくてブチル系の接着なので初期接着力が高くて作業性はいいです。ウレタンは寒いと貼り付かないこともあるので。
ローラーで圧着してみるとそこそこガッチリしてるし、これで値段がレアルシルトよりも安い、せめて同等位であれば購入検討もしやすいのですが。
剛性の低い部分程、振動は伝わりやすい。「弱点」とも言えるべきポイントを抑えて重点的に施行していけば、結果はわかりやすいものとなります。
タイヤハウス制振・遮音の効果は?<リア含め>
フロントのみの施行より、更に効果が得られました。
その体感度合いは大きく、想像を超えたものでした。
リア側の施行によってロードノイズが遠くに感じられるようになりました。
低速走行では静寂性の向上が明らかに感じ取れ、1番気になっていた荒れた路面の高速走行でのロードノイズも静かになりました。
こんなに変わるとは、といった感じです。まるでタイヤの銘柄を変えたような….そこまでは大げさかもしれませんが、とにかくフロントのみの施行よりも静音化したことは間違いありません。
不思議なことにフロント側から聞こえていたロードノイズが静かになったんですよね。
フロント側(運転席)から聞こえていたと感じていたロードノイズのいくらかは、実はリア側からの振動がフロントにまで回ってきて響いていた可能性があります。
フロント側だけでは物足りないと感じていた静音効果も、リア側も施行することで満足のいくものに。
リア側施行の際にコンコンと他のパネルよりも響いていたので、うまい具合に振動の弱点を突いた施行だったのかもしれません。
今回の施行はまだ余力を残して終えているので、次やる機会があるとすればショック周りの制振を強化してみたいと思っています。よりロードノイズの低減が図れると確信しています。
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