最近アルミテープによる除電方法について改めて見直していたらこんなのを見つけました。
「実はビニールテープでも除電できる。」
という話。
ここ数年アルミテープによる除電については全くのノーマーク状態でした。
「もうこれ以上新しい情報は出てこないだろう」
と思っていたからです。
静電気を除電することで抵抗がなくなって車の挙動が安定する。
過程はどうあれ最終的にはここに行き着くので、はっきりいって興味はなくなってきていました。
しかし、あることがきっかけで改めて下調べしていると
ビニールテープでも除電ができる。という内容の特許が公開されているではないですか。
アルミテープの除電とは?
車体の静電気を除去することで本来の性能が出せる
車両および空気は共に正に帯電することが知られており、走行時に車両およびその周囲を流れる空気流が共に正に帯電すると、それらの間の斥力によって車両表面から空気流が剥離する可能性がある。
~中略
コロナ放電によって負の極性の空気イオンが生じ、その負の極性の空気イオンによって除電器の周囲における車体の正の極性の静電気が中和除電されてその電位が低下させられ、斥力が小さくなる。それらの結果、除電器の周囲に空気流が引き寄せられるから、空気流の剥離を抑制して車体の操縦安定性を向上することができる
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
ここで簡単なおさらいです。
「アルミテープチューン」や「アルミテープチューニング」など
その呼び方は人によって様々ですが大体はこのような呼び名で呼称されているようです。
現在もアルミテープの除電によるその効果を信じていない人はいますが、
トヨタ側は車の除電に関する特許を次々に公開しているようで、今でも現在進行形として研究は進んでいると言えます。
筆者もアルミテープによる除電に関することは色々と試して、その効果は体感しています。
車のみならず家電にも試し、物や場所によって効果があったりなかったり、動作が不安定になって逆に悪いように変化したり、結果は様々でしたが除電することによって物の挙動等が変わるという現象は身をもって確認しているので、除電することによって車の性能が変化する。
ということに関しては疑いの余地はありません。
車は走行中にガラスや樹脂部分、主にバンパーなどに静電気を帯びてそれが走行の妨げとなりえる。
その走行中の静電気を除電するべく使用された物がアルミテープ。
比較的容易に手に入り、コストもかからない。施行もただ貼るだけ。
当初は世間的にも懐疑的な意見が相次ぎましたが今ではそんなことはなく、ユーザーによって次々とその効果が報告されています。
ビニールテープでも除電できる?
トヨタの特許に記載されている
これまでも静電気を除去できるのであれば必ずしもアルミテープである必要はないとされ、
入手性と費用対効果の観点から見ると選びやすい部材、ということでアルミテープが使われていました。
その他アルミテープの代わりになる部材と言えば銅テープや導電性テープなど、電気を通しやすい物が選ばれていましたが、そこでトヨタが一石を投じました。
ビニールテープでもいい。というのです。
導電性のある各種の材料は、従来一般的に用いられる導電性のない合成樹脂材料と比較して高価であり、記載された構成では、材料コストや製造コストを抑制する点で未だ、改良の余地があった。除電器を車体表面に貼ると、外観の見栄えを損なう可能性があり、この点でも未だ、改良の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目して成されたものであり、車体における静電気を十分に中和除電することができると共に、材料コストや製造コストを低減することができ、しかも、外観の見栄えを良好に維持することのできる車両の除電器を提供することを目的とするものである。
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
と前置きがあり、従来のアルミテープでは材料、製造コストがかかってしまう点と見栄えの悪さという点で改良の余地があるとされています。
確かに、アルミテープを貼ると見栄えは良くない。
筆者は極力隠れる部分に貼っています。
アルミテープを使ったときにかかるコスト、見栄え、この2つの改善策として樹脂テープを新たに除電器として設ける。
というのがこの特許の中身です。
樹脂テープは、特定部位と比較して負の極性の静電気を帯びやすい合成樹脂材料によって形成され、粘着剤の表面抵抗値は1×1010(Ω)から1×1011(Ω)の範囲に設定されている。また、樹脂テープは、金属材料や導電性を有する合成樹脂材料などを備えていないため、そのような導電性のある材料を有するテープと比較して、低コストであり、したがって、除電器の材料コストや製造コストを低減することができる。また、この発明では、樹脂テープの表面積は、自己放電による負の空気イオンによって特定部位およびその周囲の正の電位を中和除電して低下させる、いわゆる放電特性が同じであるアルミニウム粘着テープの表面積と同じに設定されている。また、樹脂テープの周縁部の長さはアルミニウム粘着テープの周縁部の長さの3倍から5倍に設定されている。つまり、樹脂テープにおける負の極性の静電気と正の極性の静電気を帯びる空気とが接触したり、自己放電を生じたりする箇所あるいは長さが可及的に長くなっている。
~中略
さらに、樹脂テープは合成樹脂材料によって形成されるから、色彩や形状などのデザイン、材料などの選択の自由度が大きい。そのため、車体表面に除電器として貼付するとしても、車両の見栄えを良好に維持したり、あるいは見栄えを損なうことを抑制したりできる。
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
ここに記されている樹脂テープとは
ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、セロファン、ポリ塩化ビニル、テフロンなどを挙げることができる。
と記載があります。
これがもし本当のことならば、アルミテープじゃなくてセロファンテープでも除電することができる。
ということになり、今まで散々試してきたアルミテープはなんだったんだ?と。
更にアルミテープ除電のアンチ派が増えてしまいそうな、そんな気配すらします。
今までの考えだと対象物の静電気を取り除く為に必要な能力として導電性に優れた材質を使うのが大前提であって、それがアルミテープは最適だという話になり、
その作用原理として静電気がアルミテープに帯電したとき、アルミテープの端部からコロナ放電によって静電気が除電される。
簡単に言うとこんな感じの理屈で筆者は理解していたのですが、
この理屈のそもそもの根本を覆すような、そんな話ですよね。
導電性材質ではなくてもいい。と言っているので。
アルミテープと同じようには使えない
注意するポイントとして樹脂テープを除電器として使うにはその長さがポイントとなるようです。
ビニルテープ6の周縁部6Aの長さをアルミニウム粘着テープの少なくとも3倍に設定すると、アルミニウム粘着テープと放電特性が同じになり、車両1の操縦安定性が良好になることが認められた。また、ビニルテープ6の周縁部6Aの長さがアルミニウム粘着テープの5倍以上になると、操縦安定性の低下が認められた。これは、ビニルテープ6の周縁部6Aの長さが過大になると、それに伴ってコロナ放電による静電気の放電量も増大し、その結果、車体の静電気の電位が大きく低下して一時的にコロナ放電が生じなくなるためであると思われる。つまり、車体と空気流との間にクーロン力が生じている状態と、そのようなクーロン力が生じていない状態とが交互に生じ、空力特性が断続的に変化するためであると思われる。そのため、ビニルテープ6の周縁部6Aの長さの最大値はアルミニウム粘着テープの5倍に設定した。なお、この発明の実施形態で「放電特性が同じ」とは、特定部位にビニルテープ6を貼付した場合であっても、特定部位にアルミニウム粘着テープを貼付した場合と同様に、自己放電が生じ、それによって生じた負の極性の空気イオンによって特定部位およびその周囲における正の極性の静電気が中和除電されて操縦安定性が良好になることを意味する。
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
ここでは樹脂テープをビニールテープと記載して説明されています。
ビニールテープの周縁部の長さがアルミテープの少なくとも3倍の長さに設定するとアルミテープと放電特性が同じになる。
しかしこの長さが5倍以上となると逆に操縦安定性が低下した、とあります。
ビニールテープでも大丈夫だからといって、むやみやたらに長くするとかえって逆効果になりかねない。
ということみたいです。
ではどの程度が適切な長さなのか?
これを正確に求めるには
特定部位に貼り付けかつ自己放電を生じさせることによって前記特定部位およびその周囲における正の極性の静電気が中和除電されて車両1の操縦安定性が良好になるアルミニウム粘着テープの表面積および周縁部の長さを求める。
車両1を走行させ、アルミニウム粘着テープでの自己放電によって前記特定部位およびその周囲における正の極性の静電気が中和除電されて車両1の操縦安定性が良好になるか否かを運転者による官能試験によって評価する。
操縦安定性が良好になったと評価されたアルミニウム粘着テープの表面積および周縁部の長さを基準値として採用し、上記と同様にして帯電させた車両1の特定部位に、アルミニウム粘着テープに替えてビニルテープ6を貼付した。
車両1を走行させ、ビニルテープ6での自己放電によって前記特定部位およびその周囲における正の極性の静電気が中和除電されて車両1の操縦安定性が良好になるか否かを運転者による官能試験によって評価した。この走行実験を、特定部位に貼付するビニルテープ6の周縁部6Aの長さのみを変更して繰り返し行い、自己放電によって特定部位およびその周囲における正の極性の静電気が中和除電されて車両1の操縦安定性が良好になる、ビニルテープ6の周縁部6Aの長さを求めた。
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
要するにアルミテープを貼った後、走行試験を実施して運転者による評価で良好だと認めたとき、それを基準値として設定。
アルミテープを剥がして同様の場所にビニールテープを貼り付ける。
ビニールテープを貼り付けた後、再度走行してアルミテープと同様の効果が認められるまで繰り返し走行し、ビニールテープの長さを調整する。というもの。
これだけ聞くとなんだか手間ヒマがかかって、手軽さはないのかなといった印象。
効果はしっかりある
本当にビニールテープでも効果はあるのか?
トヨタは同特許内で試験結果も公表しており、しっかりと効果はあるようです。
(第1性能試験)
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
(比較例1)
ハッチバックタイプの第1試験車両を用意し、約30Km走行して車体を帯電させた。次いで、車体における予め定めた特定部位に、周縁部を鋭く切り立たせた所定長さのアルミニウム粘着テープを貼り付けた。このアルミニウム粘着テープが除電器として機能する。その後、再度、第1試験車両を走行させた。そして、特定部位にアルミニウム粘着テープを貼り付けることによって、第1試験車両の操作性や操縦安定性が良好になるか否かを、運転者による官能試験によって評価した。このような走行実験を特定部位に貼り付けるアルミニウム粘着テープの表面積および周縁部の長さを変えて、複数回行って、第1試験車両の操作性や操縦安定性が良好になるアルミニウム粘着テープの表面積および周縁部の長さを求めた。その結果、特定部位に厚さ50μm、周縁部の長さが25mmのアルミニウム粘着テープを貼り付けて走行すると、アルミニウム粘着テープを貼り付けていない場合に比較して、第1試験車両の加速操作や減速操作、操舵操作などに対する車両1の加速や減速、旋回が良好になった。つまり、操作性や操縦安定性が良好になった。なお、下記の各実験例では、比較例1で操作性や操縦安定性が良好になったアルミニウム粘着テープの表面積と同じ表面積のビニルテープ6を特定部位に貼り付け、その特定部位に貼り付けるビニルテープ6の周縁部6Aの長さを変更して上述した走行実験を行った。第1性能試験を行った日の気温は約20°、天候は晴れであった。
(実験例1)
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
比較例1のアルミニウム粘着テープに替えて、厚さが50μm、周縁部6Aの合計長さが25mmのビニルテープ6を除電器として予め定めた特定部位に貼り付けた以外は、上述した比較例1と同様に走行実験を行った。そして、第1試験車両の操作性や操縦安定性を、運転者による官能試験によって評価した。なお、アルミニウム粘着テープの表面積とビニルテープ6の表面積とは、それぞれ同じ表面積に設定した。
(実験例2)
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
比較例1のアルミニウム粘着テープに替えて、厚さが50μm、周縁部6Aの合計長さが110mmのビニルテープ6を除電器として予め定めた特定部位に貼り付けた以外は、上述した比較例1と同様に走行実験を行った。そして、第1試験車両の操作性や操縦安定性を、運転者による官能試験によって評価した。なお、周縁部6Aの合計長さは、ビニルテープ6の周縁部6Aを鋸歯状に形成して調整してもよく、あるいは、図4の(A)や図4の(B)に示すように、ビニルテープ6にスリットや細溝を形成して調整してもよい。また、アルミニウム粘着テープの表面積とビニルテープ6の表面積とは、それぞれ同じ表面積に設定した。
まずハッチバックタイプの車を30km走行させて車両を帯電させる。
その後、アルミテープを貼り付けて数回走行を繰り返し、操縦安定性などが最も良好となるアルミテープ長さを調べる。 それは厚さ50μm、周縁部の長さが25mmだった。
アルミテープの代わりに 厚さ50μm、周縁部の長さが25mm のビニールテープを貼り付けて再度試験走行。<実験例1>
アルミテープの代わりに 厚さ50μm、周縁部の長さが110mm のビニールテープを貼り付けて再度試験走行。<実験例2>
ざっくり説明するとこんな感じに記載されています。
この実験結果は
(実験例1)
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
これに対して、実験例1では、比較例1によるような操作性や操縦安定性は得られなかった。その理由について検討する。実験例1では、第1試験車両の走行に伴う空気との摩擦によってビニルテープ6は負の極性の静電気を帯びる。そのビニルテープ6は従来一般的に、アルミニウム粘着テープと比較して電気抵抗が大きく電気が流れにくい。そのために、周縁部6Aを鋭く切り立たせて形成したとしても、アルミニウム粘着テープと比較して、その周縁部6Aに電荷が集中したり、コロナ放電が生じたりしにくいと思われる。その結果、正の極性の空気流を引き寄せにくく、また、正の極性の静電気を中和除電したりする負の極性の空気イオンの発生量が少なくなる。つまり、比較例1と同様の作用・効果を得るためには、周縁部6Aの長さが短く、そのために、比較例1によるような操作性や操縦安定性は得られなかったと思われる。
(実験例2)
https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2019192568~車両の除電器より~
実験例2では、比較例1とほぼ同様に、第1試験車両の操作性や操縦安定性が良好になった。その理由について検討する。実験例2でのビニルテープ6の周縁部6Aの合計長さは、比較例1のアルミニウム粘着テープの周縁部の長さや、実験例1でのビニルテープ6の周縁部6Aの合計長さの約4.4倍となっている。つまり、電荷が集中していて空気流と接触したり、コロナ放電が生じたりする周縁部6Aの合計長さが可及的に長く設定されている。そのため、比較例1と同様の作用・効果を得ることができたと思われる。具体的には、第1試験車両の走行に伴う空気との摩擦によってビニルテープ6が負の極性の静電気を帯びると、その静電気はビニルテープ6やその周縁部6Aに集中する。そして、その周囲に比較例1とは反対に、図5に示すように、正の極性の空気イオンが引き寄せられる。また、周縁部6Aでコロナ放電が生じると、図6に示すように、比較例1と同様に、負の極性の空気イオンが生じる。そして、コロナ放電によって生じた負の極性の空気イオンや、空気中のマイナスイオンなどによって特定部位やその周囲の正の極性の静電気が中和除電される。こうして特定部位の電位が低下すると、電位の低くなった特定部位に対してその周囲から高い電位の静電気が供給され、持続的にコロナ放電が生じる。したがって、実験例2の構成であっても、比較例1と同様に、コロナ放電を伴う空気イオンの引き寄せや斥力の低下などによって、特定部位やその周囲における車体表面からの空気流の剥離を抑制できたと思われる。その結果、比較例1とほぼ同様の作用・効果を得ることができたと思われる。
<実験結果1>は効果が得られなく、<実験結果2>では効果が得られた、と記されています。
<実験結果1>では一般的にビニールテープはアルミテープと比較して電気抵抗が大きく、電気が流れにくい。
その為、コロナ放電が生じにくいと思われ、 正の極性の静電気を中和除電したりする負の極性の空気イオンの発生量が少なくなる。
<実験結果2>では<実験例1>でのビニールテープの周縁部の長さの約4.4倍に設定した。
約4.4倍に設定したことで摩擦でコロナ放電が生じやすくなり、斥力の低下などによって空気流の剥離を抑えることができる。
このように特許内ではビニールテープの除電効果による実験結果が公表されています。
既に市販車に装着されている?
新型86やBRZには既に装着されているのでは?
とのウワサを聞いて調べてみたところ、新型86とBRZのフロントエアアウトレットに何やら画像のような模様が施されているとのこと。
デカールの類なのかと思っていましたが、よくよく見てみると完全にシボ加工ですね。
型成型です。
この加工を施すことでホイールハウス内の整流を促す、ということらしいです。
ちなみに86とBRZで効果が違い、両者の車の性格に合った性能を与えているんだとか。
こんな細かな部分まで煮詰めているとは恐るべし。
このケースでは除電シート・テープの類ではなかったものの、今後こういった空力や整流デバイスとして商品展開されていく可能性も大いにあり得ると思うので、期待できます。
効果は確実にありそう
今回のことをまとめると
- ビニールテープでの除電は確かに効果はある
- 施行してその効果を得るにはアルミテープよりも難しそう
- アルミテープを買うよりも安い
トライ&エラーが前提なので導電性に優れたアルミテープを貼るよりも、その効果を実感するのは時間と労力が必要になります。
一切のムダを排除しようとするのがトヨタのやり方なので、その内市販車に装着されてくるのはコストの高いアルミテープより、ビニールテープになる日もそう遠くないのかも。
今後も除電の研究を続けていくでしょうし、また新たな研究結果が公表されてくるでしょう。
車の除電にはこの先も注目です。
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