私的な話になりますが、この度車を乗り換えました。
キャデラックSRXクロスオーバー、に。
アメリカン・フルサイズV8の最後のモデルと言われたDTSからの乗り換えです。
ここでは新たに愛車となったキャデラックSRX・クロスオーバーの試乗レビューを記載します。
キャデラックSRX・クロスオーバー
型落ちを感じさせない外観
初代SRXが4,6リッターノーススターを積んでいたのに対し、この2代目キャデラックSRXクロスオーバーは日本に正規輸入されていたモデルだと3,0リッターの1本のみ。
エンジンもさることながら、ボディもかなりのダウンサイジングを行ったモデルです。
スペックは全長4855x幅1910x高さ1690
これに3.0リットルのエンジンと6速ATを組み合わせ、269hp、30.8kgというスペック。
数字だけ見るとアメ車にしてはおとなしく、なんだか平凡に思えてしまう方もいるだろう。特に全長は国産だとクラウン辺りのサイズと同じ。
けれど実際は全く違う。実車を見れば平凡、などという言葉とは微塵も当てはまらないことに気づかされる。
スペックだけでは決して推し量れない、キャデラックというブランドのパワーを見る人誰もがSRXに感じるハズ。他とは何かが違う….と人々の感性に訴えかけるその「キャデラック」が纏うオーラは、やはり只者ではない。
それは簡単に言葉に当てはめるとすると、「個性」だったり「イカつさ」だったりするのだろう。
2代目CTSからのアート&サイエンスの流れを踏襲しているこのSRXはいかにも近未来的なフォルムで、アメ車っぽさと先進性が見事に融合。
随所にちりばめられたメッキパーツはまさしくアメ車のそれだし、写真では伝わりきらない力強い迫力、威風堂々さが確かにある。
著名人の方も記事にしていたけどCピラーが寝ているところがクーペフォルムを連想させてスタイリッシュ。バンパーグリルもいっそのこと上下に分けるのではなく、流行りの一体型にしてしまえばもっと面白いデザインになったんじゃないか?と思う。
近年のキャデラックのデザインは「個性」や「イカつさ」といった言葉で一括りに表現できない何かがあると感じる。
この2代目SRXのデビュー年は2010年。デビューしてから実に8年が経っているわけだけど、8年が経過した今でも充分デザインとしては通用する。
2代目SRXはデザインに先見の明があったと言わざるを得ない。GMがいかにこのモデルに力を入れていたか、というのが見た目からでも感じれられる。
走りはそこそこ、よく回るエンジン
SRXクロスオーバーの走行性能はどうか。なんせ総重量2.3tのボディ、あまり期待はしていなかった。
しかしこれがそれなりにスポーツしてくれるエンジンだったのが嬉しい誤算だった。
小気味よくフォンフォン吹けるエンジンはこの車のキャラクター性とは少し違った印象は受けるものの、それによって重い車体をグングン引っ張っていってくれる。
踏めば軽快なサウンドを響かせながら、タコメーターはあっという間にレッドゾーン付近にまで達する。
このボディにV6、3リッターは役不足では?という当初の考えを見事に払拭してくれた。
3リットルでも一般的には必要十分なものの、欲を言えば本国に設定のある3.6リットルエンジンの方が車重を考えると適しているのではないかと思う。
というのも不満を言うとすればスタート時のトルクが不足している印象があるのと、高速走行時に踏み足すシーンがやや多めなのが気になる。
信号待ちからのスタートはかなりもっさりしており、はっきり言って遅い。同じエンジンを積んでいる同世代のCTSでも同様の書き込みが見られることから、このような制御をしていると思われる。
それと高速道路を走行中、前車に追い越しをかけたり、合流するような場面ではアクセルをグっと踏み込まなければならないけど、グッと踏み込んでも中々思うようにスピードが乗ってこない。
これが勾配のついた道路であれば尚更もたつき感を感じる。
どちらの問題点も重たいボディがネックとなっているのだろうか。この2点はストレスだ。
しかし通常使用する分には全く問題がなく、スペックからも高回転型のエンジンなのは間違いないので回して楽しめ、というGMからのメッセージと受け取れば、それはそれで楽しめたりする。
2代目CTSと同じエンジンを採用しているので車重の軽いCTSはどんなものだろう?と、最近気になる。
乗り心地は固めでスポーティ
SRXクロスオーバーはの純正タイヤサイズはプレミアムで235/55/20。とにかくデカイ。
20インチということも相まってか全体的にわりとゴツゴツした乗り心地。サスペンション自体もアメ車くささは感じさせず、国産または欧州車寄りの味付けになっていてフワっとした感触はあまりない。
硬さを感じる足回りだけど不快ではなく、まだ許容できる範囲。
購入したSRXクロスオーバーは「プレミアム」なので電子制御のスポーツサスペンションが標準装備。
GM得意のマグネティックライドではないらしい?けど、路面の状況をリアルタイムに監視し瞬時に減衰調整するという機構はマグネライドと同じ。高速走行するとその足回りの変化はよく感じられる。
高速でのカーブ走行は腰高なSUVらしからぬ走りを見せる。まるでセダンに乗っているかのような錯覚さえ覚える。
それもそのはず。設計段階で、かのニュルブルクリンクで鍛えたという足回りは伊達ではない。
ロールは抑えられ、乗員の姿勢を崩すことなく難なく駆け抜けられる。
ステアリングもクイックな反応。安心感は高い。アメ車っぽさを求める人にとっては寂しい乗り味。
昨年、新型ハリアーを試乗する機会がありましたが乗り味としては同じような味付けに感じた。
走りに関してはグローバル展開を意識してか、やはり欧州車テイスト。シートクッションも固めで、従来のアメリカンでラフなフカフカシートとは程遠い。
静粛性も高く、高級セダンと乗り比べても遜色ない。前車であるDTSと比較しても劣るどころかSRXクロスオーバーの方が静かなのでは?と感じる位。
少しロードノイズが耳につく位か。エンジン音が静かなのも影響しているだろう。
6速ATは変速ショックがなく、とてもスムーズ。いつ切り替わったかわからない位滑らか。エンブレにしか使わないスポーツモードが勿体ない。ステアにパドルシフトもあれば良かったのに…..残念。
豪華な室内。充実したアメニティの数々。
SRXクロスオーバーを購入して素直に驚いたのが室内装備の豪華さ。外観以上に力が入っているなあ、と。順を追って紹介していきたい。
ステアリング周りにはクルーズコントロール、ステアリングヒーターが装備。
オーディオやナビ周りの操作や、音声認識によるナビ操作もステアリングスイッチで操作可能。
メーター内にある液晶パネルには様々な情報が映し出される。エンジンスタートでキャデラックのロゴが浮かび上がり、タイヤ空気圧、エンジンオイルライフや消費燃料などなど、表示できる情報は多岐に渡る。
インパネ中央にはHDDナビゲーションが備わり、ナビモニターを通じて車両システムを統合制御できる。
例えばオーディオの調整やナビの細かな設定、オートエアコンの感度調整やリトラクタブルミラーのON/OFFなど、便利機能もここで調整ができる。
オーディオの音質もなかなか。純正でここまでのレベルであれば個人的には特にカスタムする必要性は感じない。
BOSEのセンターポイント・サラウンドシステムがそこそこイイ感じに臨場感を出す。
その他、ミラーに内蔵されたサイドカメラの映像がルームミラーに映し出されたり、自動でシートヒーターやクーラーを作動させる機能があること、
湿度が高いときに作動するオートデフォッガー機能の存在など、これまでのアメ車では予想もつかないような機能が装備されていたことにとても驚いた。
そして室内のライティング。
ライトONで淡い白色の間接照明がグルリとドアトリムからインパネにかけて1週するように点灯し、高級感が一層増す。
光量が弱すぎて写真に収めることができないのが残念。
グローブボックス内は2段式。
ここで「おっ」と思わされたのがエアコンの温風・冷風を取り込めるようになっていること。これによって夏はちょっとしたクーラーボックスにもなりえる。
運転席・助手席のドリンクホルダーは2段底式になっていて、長尺の物、例えばペットボトル等は仕切りをなくし、
一般的な缶コーヒーのような大きさは仕切りを出して底上げし、持ちやすくできる。
地味に便利な機能としてブレーキとアクセルペダルの位置を調整でき、運転する人の体格に合わせて位置を自由に変えることができる。この機能はタウンカー以来。
ここまではいたれりつくせりのまさにラグジュアリーなSUVのお手本のような感じではある。
しかし、1点だけダメな部分がある。
それはステアリングチルトが手動式である。という点に尽きる。
ここまで贅を尽くしたのに何故電動にしなかったのか?ここだけは理解に苦しむ。
言ってしまえば軽と同じあり、キャデラックというブランドに全くふさわしくない。
後席も十分な広さ
チャイルドシートがあることはご愛嬌。
SRXクロスオーバーの後席も十分な広さ。大人4人は軽く乗車できる。
フロントと同様にシートクッションは固め。
さすがにDTSより広い、とまではいかないけど普通乗用車では十分な広さ。特に横幅は車体幅が1.9の恩恵を大いに受けている。
「プレミアム」ではオプションでバックレストにモニターの付いた仕様が選択でき、装備されていればリアエアコン吹き出し口からのイヤホンジャックにヘッドフォン等を差し、DVDやオーディオを堪能できる。
エアコンもリアは前席とは独立しているので嬉しい仕様。
肩口のレバーでシートのリクライニングの角度が変更できる。この辺も細かい気配りが行き届いている印象。
アームレストにカップホルダーと収納が備わる。トランクスルー機構もあるので長尺物も載せることができる。
幅広い使い方ができるカーゴスペース
そしてSRXクロスオーバーを語る上で外せないのがカーゴスペース。これが本当に凄い。国産も顔負けの、幅広く実用性のある使い方ができる。
シェードは「閉」状態からオープンの状態が2種類あり、カーゴルームのプライバシーを守りたい、といった場合は全開で使用し、
後方を遮光したい、という場合には上方に展開すればいい。そして完全に不要となった場合は取り外しもできる。
カーゴルームのスペアタイヤが備わる収納を覗くとアルミ製の間仕切りが収納されていて、
この仕切りを画像のように使用することでユーザーの思うがままのカーゴスペースを作り出すことができる。
仕切りはU字レールに沿って任意のポジションにセットすることができ、伸縮性もあるので思いきり後方にも設置することができる。
他には普段は大きなポシェットのような形に折り畳められているこのネットは、広げれば後席とカーゴルームを仕切ることができるネットとして使うことができる。
チャイルドシートがあるので私のSRXはできないけど、リアシートは倒せばフルフラット状態になるので大きな荷物も収納が可能。
12V電源も備わっているので上記のこれらの装備をうまく活用すれば車中泊も難なくこなせるだろうと思う。
キャデラックSRXクロスオーバーの故障
中古で購入するにあたって、車の故障というのは誰もが気になる部分。
このキャデラックSRXクロスオーバーは故障はない、とはいえないものの、故障は少ない車だ。とヤナセの方は言っていた。
しかし、少ないながらもSRXクロスオーバーの定番トラブルはあるので少し紹介します。
・ヘッドライトの結露
新車時のヘッドライトのシーリングが甘いのか、シーリングの材質が適していないのかは不明だが、ほとんど全ての個体で経年劣化していくとヘッドライトが結露するようになってしまうようだ。
アメリカ本国でも度々問題になっているようでヘッドライト結露の問題でよくネットに書き込みを見かける。
原因はシーリングの劣化で間違いなく、そこから雨水等が侵入してきたり大気中の湿気がライトハウジング内部に影響を及ぼしてしまうようで、
シーリングをやり直しても再発する可能性もあり、完全に修理することが難しいようだ。
ヘッドライトは高額で、日本で新品購入すると片側30万程度かかってしまうようであまり現実的ではない。
症状が出てしまったらシーリングを上から足してしまうか、殻割りできる業者に頼んできっちり仕上げてもらうか、この2点しか今のところ改善策はない。
社外のヘッドライトに替えてしまうのも1つの方法ではあるけど、純正のスタイルを崩したくない方にとってはシーリングをやり直すのが1番安上がり。
私のSRXも購入時点で結露していて購入店舗でシーリングをやり直してもらった。
・サンルーフからの雨漏れ
これも気を付けてほしい。
サンルーフ付き車は排水ドレンの劣化によってうまく排水できなくなり、雨水の室内への侵入を許してしまい、最悪電装機器を破壊してしまうことがあるようだ。
具体的には排水ドレンパイプが接続されている車体外部へと繋がる穴があり、その穴から排水パイプの接続状態が保てなくなって外れてしまう。
これも多くの個体にあるようです。
更に怖いことに雨漏りしていても普段は全く気付かないので、知らずに症状が進行して電装機器に不具合が出て初めて気づくケースもあるとか。
中古で購入したSRXにサンルーフが付いていたら、フロアマットを外してその下のカーペットをめくってみて下さい。濡れていたら要注意。
グレードによる違い
キャデラックSRXクロスオーバーは国内ではラグジュアリー、プレミアムの2グレード展開で販売していた。
基本的な装備やスペックに違いはなく、違いと言えばプレミアム専用装備として20インチアルミ、電子制御サスペンション、前席シートヒーター・ベンチレーション、後席シートヒーターが標準装備される。
また、プレミアムにはオプションとしてリアエンターテイメントシステムが選べ、ヘッドレストにモニターが付いて後席のおもてなし要素が強まる。
購入はプレミアムをおすすめしたい。中古市場ではあまり価格差がなく、プレミアムがやや高い程度。
「キャデラック」に乗るのであれば様々な装備が追加されたグレードを選びたいところ。
キャデラックSRXクロスオーバー・後期型
2013年からマイナーチェンジされ、外観の変更点としてグリルとサイドウインカーの形状変更、アルミのデザイン変更、そして最も大きな変更点がCUE(キャデラック・ユーザー・エクスペリエンス)を装備したこと。
これによって室内メーターパネルとインパネ中央部が大きく変わり、使い勝手も前期とは大きく変わった。
2014年からはCUEにパナソニック製のナビが内臓され、ますます使い勝手は向上。
安全面でも強化。サイドゾーンブラインド、フォワードコリジョンアラート、等々の最新装備が追加された。
詳しくはGMオフィシャルで確認してほしい。
後期型はCUEになったことが大きなトピックだが、初物の技術ということもあってかこのCUEは不具合も多く、他のキャデラック車でも多数の不具合が報告されている。
画面がフリーズしたり、ナビが起動しない、タッチパネルが反応しない、など。
これから中古購入の際は注意してほしい。
後期型はカラーバリエーションが大幅に減り、出回っている正規輸入車の個体はほとんど白か黒。本国では様々なカラーが選べたのだが….。
全ての要素が高い次元でうまくまとまった車
2代目キャデラックSRXクロスオーバーがリリースされてから、当時のGMの売り上げで世界セールス150%増という、かなり好調な滑り出しを記録した車。
2010年代前後はリーマンショック直後ということもあり、GM車の販売は冷え切っていた。
それがこのSRXクロスオーバーでようやく希望の光が見えてきた。という状況だったのではないだろうか。
SRXクロスオーバーは世界的にもキャデラックブランドで1番の人気車種となり、ここ日本でも1番売り上げがある。
その理由がよくわかる。大きくうなずける位よくまとまった車だなあと。極端に突出した部分もなく、かといって劣っているところもない。
市場の好みをよくリサーチして、それを車作りにうまくフィードバックしている、という部分があちこちに見られる。
もはや、独りよがりで自分の道をただひたすら突き進むアメ車、というのは我々ユーザーが思い描いている過去の産物にすぎない。
そういったところが好きだ、というアメ車ファンの方々が多いのも事実ではあるけど、私達アメ車乗りも変わらなければならない時代になってしまったのかもしれない。
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